おいしい英国レシピ No.22 Bakewell Tart

これまで紹介してきたイギリスのお菓子の中に、地域の名前が付いたお菓子がいくつかあります。
ウェストモーランドペパーケーキ、エクルズケーキ、ウェルシュケーキ、デヴォンシャースコーン。

ということで、今回は地域の名前が付いたお菓子“Bakewell” tart(ベイクウェルタルト)です。

Bakewellとはしっかりと焼くという意味では無く、前述したように町の名前で、イギリスの中東部のダービシャー州(ピーク地方)にあります。
イギリスの地方というと、日本ではピーターラビットで有名な湖水地方がメジャーですが、その南に位置するピーク地方は湖水地方に勝るとも劣らない風光明媚な地域です。
大自然の中に小川が流れ、朝靄がかかっている中に羊たちが群がっている風景は、日常とかけ離れた物語の世界で、まるで360度に描かれた絵画のようです。このような景色をピーク地方では多く見ることができます。

このピーク地方、イギリス映画の舞台にもなっています。

ジェーンオースティンがお好きな方は既にご存じかもしれませんが、Pride & Prejudice(プライドと偏見)という映画では、キーラ・ナイトレイが演じるベネット家の次女・エリザベスが傷心を癒やすために叔父・叔母と共にピーク地方を訪れています。
エリザベスが、ピーク地方のBakewellで滞在したホテルは、『The White Horse In(現在名:The Rutland Arms Hotel)』と呼ばれる実存するホテルなのですが(ジェーンオースティンは当時頻繁にこのホテルに宿泊していたため、舞台になったのかもしれませんね)、なんとそのホテルでBakewell“Pudding”が誕生したそうです。

このBakewell Puddingですが、実はある間違いから生まれたお菓子と言われています。

その間違いが起こったのは1860年代。ホワイトホースに宿泊していたゲストからイチゴのタルトの注文を受けました。
しかし、そこで働いていたシェフが若くて経験不足だったため、タルト生地に流すアパレイユを間違って、イチゴジャムの上に流して焼いてゲストに出してしまったそうです。
ところが、そのお菓子はゲストに絶賛され、それ以降Bakwell“Pudding”として名物になり、現在も秘蔵のレシピとして受け継がれているそうです。

ところで、タイトルにはBakewell “Tart”、でも上述の文章にはBakewell “Pudding”と書いてあるので、どちらが正しいの?と思う方もきっといらっしゃるでしょう。
もちろんどちらも正しく、そしてどちらも存在します。
Bakewell TartはBakewell Puddingが進化したものなのです。

Bakewell Tartは、“タルト”と言うことで、ショートクラストペーストリーと呼ばれる生地が使われ、Bakewell Puddingの方は、パフペーストリー(パイ生地)が使われます。
生地の上にはどちらともストロベリージャム(ラズベリージャム)がのせられていますが、その上に流してあるアパレイユに違いがあります。
Puddingの方は牛乳と卵が多く入っているので、焼いた際には少し固めのプリンのようですが、tartの方はアーモンドパウダーが多く入っているため、しっかりとした生地になります。

どちらのレシピも紹介したいところですが、プディングは近いうちにということで、今回はタルトの方のレシピを紹介します。

タルト生地のショートクラストペーストリーにはお砂糖が入っていませんが、フィリングに入っているアーモンドのコクとお砂糖の甘さでバランスを取っています。
焼きたてより、しっかりと冷めてからお召し上がり頂いた方が、スライスアーモンドの香ばしさが増しますよ。

タルトの生地まで作るのは大変~、と思われるかもしれませんが、砂糖が入ってない分とても扱いやすい生地ですので是非お試し下さい。

18㎝タルト型
(材料)
【ショートクラストペーストリー】
150g 薄力粉
65g 食塩不使用バター *約2㎝の角切りにする
2-3Tbsp 冷たい水

【フィリング】
約2Tbsp ラズベリージャム
100g 食塩不使用バター
100g グラニュー糖
100g アーモンドパウダー
1個  卵 *常温に戻しておく
35g スライスアーモンド

【ショートクラストペーストリー】
1.ボールに薄力粉とバターを入れ、指先を使ってバターと薄力粉をパン粉の様な状態になるよう混ぜ合わせていく
写真1.1
2.冷たい水を加えて、手でこねてひとまとまりにしたら、作業台に粉をして麺棒で型より一回りの大きさに伸ばす
写真2.1
写真3.1
写真4.1
3.生地を型に敷きつめ、麺棒を使って生地をカットする
※この際のコツは指を使って、型にしっかりと貼り付けていく
写真5.1
写真6.1
写真7.1
4.ラップをして冷蔵庫で約30分休ませる
5.オーブンを180度に予熱する
6.休ませた生地に型より一回りの大きさのベーキングシートをしき、重しをのせて180度に温めたオーブンで15分焼き、ベーキングシートと重しを取り、さらに5分焼く
写真8.1
写真9.1

【フィリング】
1.焼き上がったタルト生地の底面にラズベリージャムをスプーンで塗って広げる
写真①.1
2.鍋にバターを入れて火にかけて溶かしたら、火から外し砂糖を加えてよく混ぜ、その次にアーモンドパウダー、溶いた卵の順で加えよく混ぜる
写真②.1
写真③.1
写真④.1
写真⑤.1
3.2のフィリングをジャムを塗ったタルトに流していき、スライスアーモンドを全体にまぶす
写真⑥.1
写真⑦.1
4.180度に温めたオーブンで約40分間焼いて完成
※アーモンドが茶色になり始めたら焦げを防ぐため、ホイルをかぶせて焼く
写真⑧.1

【Kanako公式HP】

Food culture and society

※現在新HPへ移行中のため、上記リンクは繋がりません。
筆者kanako様のプロフィールとお問い合わせは下記リンクのページをご利用ください。


ロザリーのTOPページへ戻る

関連記事

  1. ミドルズブラの郷土料理パーモ

    パーモ(parmo)ミドルズブラの郷土料理

  2. おいしい英国レシピ No.17 Eccles Cake

  3. おいしい英国レシピ No.51 Crumpets

  4. おいしい英国レシピ Vol.8 Devonshire scone

  5. おいしい英国レシピ No.26 Tonbridge Biscuits

  6. christmaspudding

    【クリスマスケーキはこれで決まり!】おいしい英国レシピ 特別版 Christmas Pudding

  7. uk-recipe-shortbread

    おいしい英国レシピ Vol.7 ショートブレッド(Short-bread)

  8. おいしい英国レシピ No.23 English Madeleines

  9. おいしい英国レシピ No.28 Caraway Seed Cake

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP