おいしい英国レシピ No.26 Tonbridge Biscuits

ビスケット3回目はTonbridge Biscuits(トンブリッジビスケット)です。

トンブリッジとはロンドン南東に位置するケント州にある町の名前になります。
ゆえに、トンブリッジビスケットはトンブリッジ生まれのビスケット?と思うかもしれませんね。
しかし、このビスケットの起源はトンブリッジの北部に位置するTunbridge wells(タンブリッジウエルズ)という町になります

それでは、なぜ現在トンブリッジビスケットと呼ばれているのでしょうか。
どうやら、Tunbridge wells Biscuits(Romary’s biscuits)の歴史にヒントがあるようです。
ということで、タンブリッジウェルズビスケットのことについて少しお話しします。

タンブリッジウェルズビスケットは別名Romary’s biscuitsとも呼ばれているように、Alfred Romaryが1862年にタンブリッジウエルズの26 Church RoadでRomary bakeryとしてお菓子のビジネスを始めました。
そのお菓子の中でTunbridge wells Wafer(タンブリッジウエルズの※聖餅)(Biscuits)は、“レースのように薄い繊細な聖餅(ビスケット)”として知れ渡り、ロンドンのハロッズやフォートナームメイソン等の高級デパートのみならず、海外のニューヨークのメイシーズやベルギーそしてパリのデパートでも販売され、世界で有名になったそうです。

1876年のクリスマス前には、ヴィクトリア女王がアルフレッドのお店を訪れ、イギリス王室御用達の証である“Royal Warrantロイヤルワラント(英国王室の認可)”が与えられました。
その60年後の1935年には、残念ながらRomaryはRowntreeに買収され、1957年には戦後の配給問題もあり、Tunbridge wells Waferの生産は一時中止になってしまいましたが、女王が好きだったこともあり、1963年にはグラスゴーにあるRowntreeの工場で1981年まで生産され、チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚のために焼かれたのが最後のタンブリッジウェルズビスケットだったようです。

そして最終的には1988年にRowntreeがNesleに買収され、それ以降タンブリッジウェルズビスケットのレシピが行方不明になり、30年以上たった今でもそのレシピは判明しておりません

ということで、タンブリッジウェルビスケットのレシピは未だに不明であるため、タンブリッジウェルビスケットは現在存在せず、その代わりに言い伝えられたのが、タンブリッジウエルズの北に位置するトンブリッジのトンブリッジビスケットのようです。
ゆえに起源はタンブリッジウェルズにありながら、トンブリッジビスケットと言われる由縁です。

ヴィクトリア女王からロイヤルワラントを頂いた由緒あるお菓子なのに、企業の合併や外資企業による買収などで伝統が失われるというのは本当に悲しいですね。
合併などで企業が大きく成長する一方、小さな歴史的産物が失われていくという現実にも私たちは目を向けていかなければならないと思います。

それでは、レシピの紹介です。このトンブリッジビスケットの特徴はキャラウェイシードという、原産地が西アジアのセリカ科の香辛料を使っています。
見た目はクミンシードに似ていますが、味は全くちがい、甘みとセロリを思わせるようなスッキリとした香りがあり、またプチッとした食感があります。
他のビスケットと比べると砂糖が控えめになっておりますので、子供達のおやつにもいいかもしれません。是非お試し下さい。

※聖餅(せいへい)~ミサなどで食される無発酵のパン、ホスチアとも呼ばれる。キリストの実体として信じられ食べられている物。

(材料)
75g 食塩不使用バター(2㎝の角形にあらかじめカットする、使う直前まで冷やしておく)
225g 薄力粉
75g グラニュー糖
1個 全卵
1個分 卵白
キャラウェイシード 適量

1.オーブンを180度に予熱し、オーブン板にあらかじめベーキングシートを敷く
2.あらかじめ2㎝の角形にカットしたバターと薄力粉をボールに入れて、指でバターをつぶすようにしながら、薄力粉と合わせパン粉のようにぼろぼろの状態にする(写真1)
写真1.1
3.グラニュー糖を加えて泡立て器でよくかき混ぜる(写真2)
写真2.1
4.全卵を溶きほぐして③にいれ、ゴムベラでざっくりかきまぜたら、手でこねてひとまとまりにする(写真3・4・5)
写真3.1
写真4.1
写真5.1
5.作業台に粉をしてから生地をのせ、生地に粉をしたら麺棒で約0.5㎝の厚さに伸ばし、5㎝のセルクル型で抜き取る(写真6・7)
写真6.1
写真7.1
6.抜き取った生地をオーブン板にのせて、卵白を刷毛で表面全体に塗ったら、キャラウェイシードをまんべんなくふりかける(写真8・9)
写真8.1
写真9.1
7.180度に予熱したオーブンで約12分表面がうっすらときつね色になるまで焼き、焼き上がったらラックの上で冷ます
完成

【Kanako公式HP】

Food culture and society

※現在新HPへ移行中のため、上記リンクは繋がりません。
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