テレビ受信料、支払いは義務?(その2)

その1のつづき

私は断然、納得できなかった。
これはお金の問題じゃないのだ。
だが、事態はそんな私の青臭い正義感が通用する状況ではなかった。

夫が管轄の裁判所に出向いていくと、裁判所から指定された法廷の開廷予定に私の名前がすでに書かれていたとのことで夫はあせった。

夫は私の住む地域を選挙区とするMP(国会議員)に大急ぎで手紙を書いてくれた

議員への陳情

名前をH氏という自民党の議員で、夫はH氏を支持していた。
H氏は毎週、トラブルを抱えた市民(移民を含む)にアドバイスをするボランティアをやっている
指定された場所は下町にあるスーパーマーケットのフードコートだった。

そこにはH氏を支持する若いボランティアが、陳情を待つ人々に番号札を配ったり、陳情のあらましを聞いて紙に記入したりしていた。
陳情者はほとんどがアフリカ系、中東系、東ヨーロッパ移民という感じで、生粋のイギリス人といったら私の夫と国会議員のH氏だけって感じだ。
「選挙の投票権がない人のほうが多そうだけど…」H氏の人柄や政治家としてのポリシーが垣間見える気がした

待つこと2時間。私たちの番になる頃には周囲はすっかり暗くなっていた。
H氏さんは60歳くらいでハリソン・フォード似、大きなからだに優しい目をした紳士だった。

イギリスにおける市民のための政治

夫の説明に耳を傾けてから、きっぱりした口調で言った。

「こうなったらまず受信料を支払って、そのあとでクレームをつけて返金請求する作戦でいきましょう。それが確かで早いから」

てきぱきと問題をさばいていくH氏を、私は心底かっこいい!と思ったものだ
クレームはH氏のオフィスから出してくれるという。

「そうそう、とにかくテレビは家主に言って撤去してもらいなさい、それからもう、調査員を家に上げちゃダメだよ」

私はその言葉に従った。
大家に連絡すると、テレビは捨ててくれということだった。
夫はマンションのコンシェルジュに5ポンド握らせて、その古いテレビを『捨てさせた』。

イギリスのテレビ受信料は税金

しばらくしてBBCから丁寧な謝罪状が来た
H・MP氏からのクレームに答える形で「調査員の不徹底な調査によって引き起こされたトラブルに対し、謝罪し、返金します」と小切手が同封されて来た。
夫は念のため裁判所に出向き開廷予定から私の名前が消えているかどうかを確認し、安心したようだ(私は法廷に立ってみるのもそれはそれで貴重な経験だとは思ったのだが…)。

私たちはイギリスのスタンダードから考えたらまるで夢のような急転直下の問題解決に感謝し、H・MP氏にお礼状を書いた
彼の方からは、美しいレターヘッド入りの簡単な「返礼」が届いた。
H氏のサインは勢いがあってそれでいて、てらったところのない、美しい署名だった。
今でも私の宝物である。

このように国営テレビ受信料は、イギリスでは不払いの場合訴えられ、裁判にかけられるほどの「大事」なのでくれぐれも侮るなかれ
税金、くらいの認識でいたほうがいいのだ。
とっても高いけどね。



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