日本のおばさんが、クリント・イーストウッド似のイギリス人と結婚できた理由 3 イギリスデートと言葉の壁

私たちは、翌週末にふたりでウォークをする約束をした。

最初にでかけたのはSevenoaksという町からIghtham Mote という堀に囲まれた貴族の館までのループコースだった。
往復13キロばかりのこのコースはマルコムの十八番だったので、その後もよく歩いた。

SevenoaksにはKnoleという城があって、広大な庭には鹿がたくさん放し飼いになっている。
なんでも、飢饉のときには城の主に供されるために飼われていたらしいが、今では奈良公園化している。

第1話はこちら

あいづちの難しさ

広大な庭園を突っ切って楢や栗の繁る森に入り、牧場を越え、見晴らしのいい高台に出る。
そこからはケントの丘陵地帯「ノース・ダウン」が見渡せる。

「地面を見てごらん、白いだろう? この丘はチョークでできているんだ」

マルコムにいわれて地面に目を落とすと、草の間から覗いているのは土ならぬ、白い岩のようなものだ。
チョークって、石灰岩のことだろうか?

「この辺りは、海底の隆起によってできたんだ。昔は海の底だったんだよ」

私は自然に関するマルコムの知識に驚き、しきりに「I see」「I see」と相づちを打ち続けた。
マルコムが見かねて「他の相づちも打ったほうがいい」とアドバイス

「I seeでは間違いなの?」と聞くと「間違いではないけど、バラエティがあったほうがいいでしょ」との返事が帰って来た。

わかってるけど、何と言ったらいいかわからない!ということが相手にわからないようだった

相づちは、基本的には相手のいうことの動詞か助動詞に合わせて、念を押すように繰り返すのが自然だ。
例えば「I can’t swim」(僕は泳げないんだ)と相手が言ったら、「Oh, can’t you?」(あら、そうなの?)と、can’tを使って相づちを打つわけ。
だが、それが反射的に口をついて出てくるまで数年かかった
だから「I see」という相づちはオールマイティでとても使い勝手がいいのだ。

日本人は日本語を間違えない

よく「ネイティブは間違えられない」と言うけれど、それは本当で、ネイティブの英語にミスはない。
日本人が日本語を間違えられないのと同じだ。

外国人の英語は間違いだらけで、前置詞など細かいことを気にしないけれど、ネイティブ英語は細部まで正確で、しかも前置詞などに微妙なニュアンスを持たせて話していたりするから、ネイティブの人とそうでない人との英語は格段に違う。
ネイティブが言っていることについていくだけでやっと、というのが本音である。

ネイティブの英語はハードルが高かった

マルコムはそんな私の心の中の格闘など知る由もなく、あいかわらず「I see」を繰り返す私にずっと親切だった
私たちはIghtham Moteの庭を見学し、どこかの学校の校庭を突っ切って、Sevenoaksに戻って来た。
イギリスの自然や習慣についてマルコムはたくさん説明してくれたとは思うのだが、その辺りの記憶は乏しい。
なぜなら私の頭の中には「take ? took ? taken」だの「eat ? ate ? eaten」だのといった英語の活用や文法が渦巻いていたからだった。

くどいようだがネイティブ英語はハードルが高い。

最初のデートは楽しむ余裕などなく、冷や汗ものだったのである

つづく

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