日本のおばさんが、クリント・イーストウッド似のイギリス人と結婚できた理由 10 ワトソンファミリーへの顔見せ

〜イギリスのおひとりさま事情〜

日本ではもう珍しくもなくなった「おひとりさま」だが、英語には古くから、それに該当する言葉が男女別にあることをご存知だろうか?

れっきとした身分であった「おひとりさま」

男性で生涯独身を貫くおひとりさまは「bachelor」、女性は「spinster」と呼ばれる。
独立した言葉があるくらいだから、イギリスでは一族の中に生涯縁付かず、実家に残るおひとりさまが少なからずいたにちがいない。
もちろん、こういったおひとりさまは、実家に財産がなければ養えないわけだから、そこそこの財産家に限られる身分だっただろう。
いわば、豊かさが生み出した「身分」なのである

第1話はこちら

ペギーも、マルコムの父親と知り合うまではspinsterだった。
40代後半で、二度までも妻を亡くし、子どもも手がかからなくなった初老の紳士、スティーブンに教会で紹介され、一回り若い妻となった。
オールドミスだって相手がずっと年上なら「若妻」になる。

マルコムの面会作戦プラン

そのペギーも80代半ばで夫を見送り、すっかり老いて介護を必要としているという。
弟トムのそばに暮らし、トムの妻・ジョージーナに面倒を見てもらう毎日だという。
マルコムは紳士らしく、一応礼儀として、自分の彼女を義母に紹介したいと考えたのだ。

しかしこの戦中派の英国の老婦人がアジア人、しかもかつての敵国の女性をすぐさま受け入れるとは考えにくい
そのためマルコムは初対面の策を練った。
ペギーの誕生日のお茶会に乗じて、さりげなーく視野に入れてしまおうという、いわば「どさくさ作戦」みたいなものだ

私にはこの作戦は伏せられた。
だが、私はどう挨拶してどういう態度を取ったらいいかわからなかった。
マルコムに聞いても、どうも要領を得ない感じだった。

ファミリーへの顔見せ

お茶会にやってきた私に、周囲はとても親切だった。
本音と建前のあるイギリス人だから、本当は腰を抜かさんばかりに驚いていたのかもしれない。
でも表面的にはとても朗らかで、ジョージーナなどは抱きかかえるように私を歓迎して招き入れてくれた。

中央に座って動かないペギーは、すごく年寄で、物静かなご婦人だった。
私のことをどう思ったかわからなかったし、緊張していた私には、そんなことを慮る余裕もなかった。
気をもんだマルコムの気持ちとは裏腹に、イギリスの親戚たちはきわめて大人だった。

こうやって私は、一応ワトソン・ファミリーへの顔見せを終えたのだった。

つづく

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