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日本のおばさんが、クリント・イーストウッド似のイギリス人と結婚できた理由 32話 オリンポス山登山とよくない兆候

マルコムは、心臓の不整脈の手術を2~3回受けている。
内視鏡の日帰り手術だが、心臓のパルスを切っても、症状が完璧によくなることはなかったようだ。
例えば夜中に急にムクッと起きて「胸がドキドキする」といった。
本人はそのまま死んでしまうのではないかと思うほどのパニックに襲われるようだが、おとなしくしているとそのままおさまる。
本人がとても悩んでいたので、家族や友人を捕まえては、不整脈のことを聞いて回った。
そのために私も不整脈について多少の知識がついた。

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不整脈という病気

不整脈はまれな病気ではない。
60代になると、1割の人が不整脈を持つようになるという。
そして、心臓がドキドキと早鐘のように打つ症状は、さほど心配しなくてもいいという。
むしろ、心臓の鼓動が遅くなる方が重篤らしい。
友人に、心臓の専門医もいて、さほど心配いらない、とアドバイスをもらったこともあり、私はあまりマルコムの病状を心配していなかった。

でもマルコムは違った。
胸のドキドキをすごく気にしていて、何人に「大丈夫」と言われようと、医者通いをやめなかった。

あまりにも、不整脈の症状を心配するあまり、本当の敵が忍び足で近づいてくることにマルコムは気づかなかったのかもしれない。

2011年 ギリシャ登山

私が最初の兆候に気づいたのは、2011年の夏だった。
歩く会を主催していた私たちは、毎年1回、海外遠征をするのが習慣だった。

2011年は、ギリシャのオリンポス山に登った。
ロンドンからギリシャのテッサロニキ空港に入って、そこで2~3日観光をしたのちに、登山基地を目指した。

参加者は4名と、例年に比べてとても少なかった。
日本では東日本大震災に見舞われた年。
歩く会のメンバーの中にも、家族がほとんど行方不明になってしまったと言って、急遽帰国した人もいた。
ロンドンでも大ニュースになった。
そんな年だったから、参加者も少なかった。

4人のメンバーでオリンポスの登山口からゆっくり登山をした。
体重を増やしていた私はみんなのペースについていかれず、途中で先に行って欲しいと泣きを入れる恥ずかしい一幕もあったが、マルコムは私に付き添ってくれたし、結局他の二人も待っていてくれて、4人が揃って山小屋に着くことができた。
たくさんのお花畑、世界中からやってくる登山者、広々としたロッジで私たちは冷たいビールで乾杯し、ご満悦だった。

当時、ギリシャは国庫が破綻したとニュースになっていて、どうなっていることかと心配したが、国民はいたって呑気というか、国家がどうなっても人々はたくましく生きてきたし、これからもそうなんだろうな、という感を強くした。

最初の兆候

登山計画は山小屋で一泊し、翌朝早く頂上を目指すというもの。
私たちはユースホステルのような二段ベッドでめいめい眠ることになった。
出発時間の相談をすると、マルコムは「自分はここで待っているから、3人で登っておいで」という。

「どうしたの? 疲れた?」
「ちょっとね。あと1日あれば登れると思うんだけど」

私よりも健脚だったマルコムがそんなことを言うのは珍しい。
もっともイギリス人は歩くのが好きなので、登山もその行程を楽しむ。
マルコムもサミットハンティングにはあまり執着しない人だった。
私は、ちょっと残念だと思ったけれど、不整脈のこともあったので、それ以上追及しなかった。
そして翌朝は、女性3人のメンバーでオリンポス山に登頂、雄大な自然を満喫した。
小屋で私たちを迎えてくれたマルコムはいつものように爽やかな笑顔だった。

「ゆっくり休めたからもう大丈夫」
そう行って、何事もなかったように4人で下山した。
下山後に登山口のコテージでもう1泊し、翌朝、マルコムはメンバーの一人の女性と、ロッジの飼い犬と一緒に朝の海でひと泳ぎした。
ギリシャのエーゲ海は暖かった、とマルコムが言った。
犬と友達と、真っ青な海で泳いだことは、素晴らしい思い出になった。

そのあとの体調の変化は、その時には予想だにできなかった。

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Emma Rosemary Watson

2005年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ、
Transnational Communication and Global Media修士課程終了。
以降、ロンドンにて日英コンテンツの発信を行う。
ロンドン在住中にイギリス人の夫と結婚、
イギリス流のライフスタイルのなかで暮らす。
現在、イギリス人の好むイギリスのカントリーサイドを歩くネイチャーウォークの楽しさを日本人にも知ってもらおうと活動中。

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