イギリスは自転車天国
イギリスには山がない。
丘陵地帯が続いているだけだ。
そういう地理的要因もあってか、自転車天国である。
夏になると大勢のサイクリストがあちこちでサイクリングを楽しんでいる。
さて、日本では駅前で必ず「放置自転車」がトラブルになっている。
駅前のロータリーの歩道に置かれたおびただしい自転車が歩行者の邪魔になっているのだ。
「駐輪禁止・違法車は撤去します」の張り紙もあまり効果がなさそうだ。
自転車放置→即盗難!
さて、ところ変わってイギリスには放置自転車の問題は皆無である。
さすがマナーの国、と言いたいが、それが理由ではない。
自転車を、駅前に停めておこうものなら、たちどころに盗まれるのだ。
どんな強力なカギやチェーンも何のその、すべてのくさびを断ち切って、自転車はいとも簡単に消えてしまう。
友人のサイクリストは嘆く。
「より強いチェーンにしても、敵はより強力なカッターを持ってきやがる。まるでいたちごっこだ」
なぜかチリに通話しまくられる
盗人がねらうのは自転車ばかりではない。
例えば鉄道のパンタグラフ用に設置された銅線。
これは金になるらしく、しばしば夜中に盗まれて電車を止めてしまう。
私が携帯電話ごとバッグを盗まれたとき、携帯電話使用を止めるまでの2〜3時間にチリへ10回以上の通話記録があった。
番号もわかっていた。
だから、警察の電話係がそれらをたどっていけば、犯人のチリ人がすぐに確定できたことだろう。
しかし、もちろんスコットランドヤードはそんな手間はかけてくれない。
チリ人が盗んだことが明白でも、私には、チリへの国際電話使用料を泣きながら支払うことしかできなかった(海外では国際電話料金がとても安い、という事実は書いておかなければ不公平だろう)。
盗られる方が悪い
日本では窃盗のみならず、全体的に犯罪の件数が少ない。
忘れ物や落とし物も、昔ほどではないが、フィフティフィフティくらいの確率でまだ見つかる。
イギリスでは落とさなくたって、置き忘れたらまず見つからない。
擁護するわけではないが、イギリス以外の国だって事情は同じだ。
ニースでは警官ではなく2台のパソコンが盗難届の受け付けをしていた。
盗られたほうにとっては大事でも、受け付けるほうにとっては「また間抜けが来たか」なのである。
日本の治安がよすぎるのだ。
だから日本人は海外で標的になりやすい。
友人は、ロンドンのレストランで歓談中、市民活動のPRと称してやってきた若い男性にスマホを盗られた。
自分の脇に置いたスマホの上に、彼がチラシをそっと乗せて、活動の説明をし始めたのだという。
「今、私はその活動に興味がないから」
と彼女が断ると、その男はおとなしく去っていった。
しばらくまた歓談して、レストランを出ようとなったときに、自分の脇に置いたスマホがこつ然と消えていることに気付いたという。
若い男がスマホごとチラシをつかんで持っていったのだ。
「盗まれるほうが悪い」というのが海外でのルールだと覚えておいてほしい。
塀のおかげ!?
不思議なことに、治安のいい日本は、庭もほとんどない自分の家の周囲を塀で囲んでいる。
一方、イギリスでは、たいていの家は丹精した前庭が通りから見えるように柵は設けない。
イギリス人がこんな毒舌ジョークを飛ばしていた。
「どの家にも高い塀があるから日本は犯罪率が低いんだろうよ」
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