Rosalie

アノニマスのモデルが由来のGuy Fawkes Day(11月5日)

アノニマスですっかりお馴染みになっている奇妙な仮面をご存じですか。

血の気の無い真っ白い顔にひげを生やし不気味に微笑んでいる仮面、実はそれは“ガイフォークス”を象った仮面なのです

ということで、イギリスではハロウィンよりもしかしたらガイフォークデイの方が盛り上がっているのでは?という私の勝手な憶測から、ガイフォークデイについて少しお話ししたいと思います。

議会爆発未遂犯の一人

そもそもガイフォークスって?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
世界史に精通している方でしたらご存じかもしれませんが、簡潔に言うと、1605年11月5日に議会に爆薬を仕掛けジェームズ1世を暗殺しようとした事件、いわゆる「火薬陰謀事件」に関わっていた人物の一人がガイフォークスになります
その事件は未遂に終わり、ジェームズ1世の無事を祈り、翌年1606年から11月5日は、ガイフォークスの名を取り、ガイフォークスデイとして花火を打ち上げられるのがイギリスの恒例の行事になっています。

事件の背後にある宗教の気配

それでは、なぜガイフォークスはジェームズ1世を暗殺しようとしたのか理由を探ってみると、どうやら宗教と深いつながりがあるので、イギリスの宗教の変遷に焦点を当てながら話を進めようと思います

イギリス」「宗教」この二つの言葉で頭をよぎるのは、きっと「ヘンリー8世」なのではないでしょうか。
そこで、少し遡ってヘンリー8世(在位1509-1547)から始めたいと思います。

ヘンリー8世によるイングランド教会成立

ヘンリー8世には、キャサリンという王妃がいましたが王位継承となる男子に恵まれなかった上、アン・ブーリンにすっかり魅了されてしまい(「ブーリン家の姉妹」という映画の中では。真実はいかに…)、ローマ・カトリック教会にキャサリン王妃との婚姻の無効を訴えましたが、教皇パウルス3世に却下、破門されたため、ヘンリー8世は宗教改革を行い、1534年に宗教改革議会はイングランド国王をイングランド教会唯一の首長と宣言する「国王至上法」を定め、“イングランド教会”が成立しました
反カトリックではありますが、儀式などはカトリックの面が残っていたそうです。

プロテスタントの台頭

ヘンリー8世は生涯6度の結婚をしましたが、男子の後継者はヘンリー8世の晩年に生まれたエドワード6世(在位1547-1553)のみ。
ヘンリー8世の後継者となったエドワード6世は幼かったため、実質的に政治を担ったのはプロテスタント信仰心の強い伯父のサマセット公で、礼拝統一法などを定めカトリック的な要素を否定しました。

カトリック弾圧

エドワード6世が早世すると、ヘンリー8世と最初の王妃キャサリンとの娘、メアリー(在位1547-1567)が初の女王として王位につき、ブラッディメアリーと呼ばれるほどプロテスタントの人たちを弾圧しカトリック色を強めたそうです。

エリザベス1世によるイングランド教会体制の強化

メアリーの後に王位を継いだのが、ヘンリー8世とアン・ブーリンとの娘で生涯独身を貫いたエリザベス1世(在位1558-1603)。
エリザベス1世はプロテスタントではあったものの宗教改革は行わず、多くの人をイングランド教会に取り込もうとしました
そこでカトリックの貴族たちが、スコットランド女王の位を追われたメアリー・ステュアートを擁立して反発したものの失敗に終わり、メアリーは処刑されてしまいました。

カトリックとの争い

そして、エリザベスの後継についたのは、なんとメアリー・ステュアートの子であるスコットランド王ジェイムズ6世が、イングランド王ジェイムズ1世(在位1603-1625)として即位
このジェイムズ1世が火薬陰謀事件の悲劇の主人公にはならなかった国王になります。

ジェイムズの妻のアンはカトリックに改心し、母メアリーはカトリック側について処刑されたこともあり、カトリックの信者にとってはジェームズ1世に宗教改革の期待を込めましたが、そんな期待に反しジェームズ1世は、カトリックの司祭をイングランドから追放するなどしてイングランド教会体制を堅持したため、カトリックの反発を招き、1603年にはカトリックの司祭たちがジェームズ1世を殺し、ジェームズの従弟を即位させようという陰謀を企てたりもしたそうです

そして1604年5月には、首謀者であるRobert Catesby、そしてGuy Fawkes、Tom Wintour、Jack Wright、Tomas PercyがロンドンにあるDrake inn(現在はパブになっているようです)に集まり、議会に火薬を仕掛け爆破しジェームズ1世を暗殺しようと数か月もの間計画を練り続け、いよいよ議会が開かれる1605年11月5日に、ガイフォークスは貴族院の下にある地下室で36バーレルある火薬に火をつけようと待ち伏せしていたところあえなく御用となりました。
これがいわゆる「火薬陰謀事件」になります。ガイフォークスはこれにより大逆罪になり八つ裂きにされたそうです。

イギリスにおける政治と宗教の深い関係

以上みてきたように、イギリスの宗教の変遷は国王が変わる毎に、カトリック→イングランド教会→プロテスタント→イングランド教会→カトリック→イングランド教会と約120年で目まぐるしく変わり、過去の政治の背景には必ず宗教の勢力も動いていることが窺い知ることができますね

今なお残る当時の習慣

その火薬陰謀事件の数か月後、イギリスではジェームズ1世の無事を祈り、11月5日をガイフォークスデイと定め、花火を打ち上げるなどの風習が400年以上にわたり、現在でもボンファイヤーナイト(焚き火祭)などともいわれ、続いています(ちなみに英語のGuyという単語がありますが、Guy FawkesのGuyからきているそうです)。
また1606年以降、年に一度、在位している英国王は議会が始まる開会日に参加しますが、その開会日の前には、国王衛士がウェストミンスター宮殿の地下を探査するのが今でも慣例になっているようです

ハロウィンとどっちが盛り上がってる!?

私の憶測では、イギリスにおいては、日にちが近いハロウィンよりガイフォークスデイの方が盛り上がっていると思っていましたが、聞くところによると、ハロウィンはどちらかというと小学生低〜中学年くらいの子供向けのイベントで、子供のいる地域では盛んですが、大人の集まる場所では、ガイフォークスデイが盛り上がっているようです。



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