2004年頃は、ポンド高で、1ポンド=250円をはるかに超えて推移していた。
そのため、何をするにも金がかかったが、とくに交通費は痛かった。
British Rail、いわゆる国鉄で郊外に出かけようものなら、切符を買うときにヘタに円換算すると、心臓麻痺を起こしそうな金額になった。
たとえば、電車で30分も行くような街まで4000円くらいかかるのだ。地下鉄の初乗りは900円。
ありえない金額だった。
さて、中でもイギリス文化を知らないとひどい目に合う、と感じたのが「乗り越し」のシステム。
日本の駅には「乗り越し精算機」が必ずあって、そこに切符を入れれば、不足金額が定時される。
残金を追加して精算切符を改札に通せば問題なく通過できる。
しかし、その、「乗り越しシステム」がイギリスにはないのである!
乗り越し精算機はない!
一度、買った切符以遠に行かなければならない機会があった。
私は「金額が足りない切符」を手にしたまま、乗り越し精算機を探したが、そんなものはない。
仕方がないので、切符売り場のそばにいた駅員のおじさんに
「乗り越したんで、精算したいのですが」
と話しかけた。
ここはイギリス
すると、おじさんは
「これはルール違反です。ペナルティになります」
と勝ち誇ったように言って、違反の書類を書き始めた。
「ちょっと待ってよ」である。
「もしタダ乗りする気なら、あなたにわざわざ話しかけませんよ。私は不足金を支払おうと思ってこうやって申告しているんです」
「切符は目的地まで買っていただくルールです。あなたは違反したので、罰金20ポンド支払ってください」
「罰金て…。なんて原始的なの!乗り越し精算は日本では当たり前のシステムですよ」
言い募ると、おじさん顔色を変えずに
「ここは日本じゃありませんからね」
不正乗車防止策
「それでは、電車に乗っていて、もう少し先の親戚を訪ねたくなったら、切符はどうするんですか?」
私は聞いた。
「そういう場合は、切符を買ったところで一旦降りて、その駅で続きの切符を買うんです」
嘘つけ、と私は思った。
それでなくても遅れたりキャンセルになったりするイギリスの国鉄、一旦降りたら次はいつ来るかわかったもんじゃないのだ。
どちらかというと、これはタダ乗りを防止するための理屈だろう。
駅員は罰金の請求処理を私の前に突きつけ、駄目押しみたいに言い放った。
「文句があるなら、ここにある連絡先に訴状を送ってください」
「もういいよ」
私は20ポンド札と一緒にその書類を彼の目の前に叩きつけた。
最後のはかない抵抗だった。
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