パディントンを50年間愛し続けた 松岡享子先生の講演会&ショートインタビュー

松岡享子へインタビュー

ロザリー編集部です。
前回、渋谷Bunkamura ザ・ミュージアムにて6月25日(月)まで開催中の「生誕60周年記念 くまのパディントン™展」をレポートいたしました。

【くまのパディントン™展】

前回記事:「生誕60周年記念 くまのパディントン™展」の全レポート

その後、5月31日に行われた松岡享子先生の講演会に参加いたしました。

松岡享子先生は児童文学「パディントン」シリーズの日本語訳を担当し、50年の間、パディントンを日本に紹介し続けてきました。
この「くまのパディントン™展」も監修していただいていて、東京子ども図書館の名誉理事長でもある御方です。

講演会のあと、松岡享子先生にショートインタビューをさせていただきましたので、講演会のレポートと合わせてご紹介いたします。

記事の前半は講演会レポート
後半はショートインタビューのレポートになっています。

あまりの人気に受付が10分で終了!!

定員50名の講演会でしたが、なんと、応募開始から、お申込みが殺到し、
たった10分でお申込み終了となりました。

会場に着くと、展覧会場に並べられた椅子の多さにびっくりしました。
キャンセルも、ほぼなく全員いらっしゃるという大盛況!

「思いがけない事」がテーマ サプライズ盛沢山の講演会

松岡享子先生の講演会パディントンのファンにはお馴染みの「グルーバーさんとのお茶会」である「お十一時」をイメージしたソファに松岡先生が座り、講演会が始まりました。

最初に松岡先生から本講演のテーマが語られました。
そのテーマとは、「思いがけない事」

これは、パディントンの物語では、いつもパディントンとパディントンを取り巻く人々に「思いがけない事」が起こるという定番パターンがある事。
また、パディントンが生まれ、今のように育っていった事が作者マイケル・ボンド氏にとっても「思いがけない事」であったためです。

そんなパディントンの講演会だからこそ、来場された皆様にも「思いがけない事」であって欲しいという想いから、
なんと、サプライズで、松岡先生自身によるパディントンの朗読をしてくださいました。
しかも、素敵なピアノとフルートの生演奏付き!

【フルート奏者 末松明葉さん】


松岡先生が朗読するパディントン「どうぞこのクマのめんどうをみてやってください」

朗読なされたのは、「パディントン」シリーズの最初の話である「どうぞこのクマのめんどうをみてやってください」から
1ページから11ページ(福音館書店版)
ブラウン夫妻が「パディントン」と名付けるシーンまで。

松岡先生の朗読は、温かくて美しい、完璧な息遣いでした。
聞いている人を引き込んでいく間の取り方が絶妙で、あっという間に会場をパディントンの世界に誘ってくれました。
松岡先生は、これまで子どもたちにお話を語ってこられたそうですが、
朗読には、「キャラクターを立てる」「感情に訴えかける」といった表現を強く感じました。

また、演奏が入るタイミングも完璧で、綺麗な音色が物語に臨場感を与えてくれていました。

松岡先生の考える「名作」の条件とは

朗読が終わったあと、パディントンがなぜ面白く、これ程までに世界中で愛されているのか、その魅力を語ってくださいました。
「長く愛される作品というのは、作者の生活に深く根差した所で作られている作品」と松岡先生はおっしゃいました。
その「深さ」とは、「作者の無意識に至る所にまで深い」とも。

パディントンでは、例えば、特徴的な帽子やダッフルコート。
帽子は、実際にボンド氏自身が愛用されていたそうで、ダッフルコートは当時の流行でした。

また、グルーバーさんがハンガリー出身なのは、ボンド氏がBBCのテレビカメラマン時代に出会った経験の中で、「ハンガリー出身者が最も礼儀正しい」と感じた事から、決まったようです。

そうしたボンド氏の生活に根差した所から、作品作りが成されているからこそ、パディントンはここまで愛される作品になったと思うと語ってくださいました。
マイケル・ボンド氏について語る松岡先生は、長年の思い出を一つ一つ慈しみながら振り返るように優しい表情をされていました。

パディントンを育てたのは読者

パディントンが移民・難民問題に関しての作品という見解は多くあります。
ですが、確かにマイケル・ボンド氏が移民・難民をテーマに添えていたとはいえ、その問題に意見を物申すために書いた訳ではないと語りながら、
そんな風な捉え方を読者が見つけてくれるのも、公に出版された本だからこそであり、「パブリッシュ」された本とは読者が育てていくものだとも語ってくださいました。

松岡先生が読み始めた当時の印象では「上質なエンターテイメント」という感想だったとの事です。
今改めて読み直してみると、また印象が違って、「イギリス社会の在り様」「普遍的価値」を感じる作品であるとも思ったとの事です。

「パディントン、法廷に立つ」の朗読と「パディントンのうた」を合唱!

パディントン展の松岡享子先生講演会の様子最後に再び「パディントン、法廷に立つ」をご朗読。
会場からは一回目と同様、楽しい笑い声がこぼれながら、来場した皆様が聞き入っていました。

更に、最後の締めとして「パディントンのうた」を皆で合唱!
会場に大きな歌詞カードが出されながら、合唱していくという楽しい最後の締めくくり。

いきなり歌うのは難しいと思っていましたが、最初にお手本の歌が入り、次にお手本を追いかける合唱をして、最後は皆でしっかり歌えるようになっていました。
覚えやすくて癖になる歌で、パディントンらしさが溢れていたので、また聴きたいと思いました。

講演会全体で感じたのは、「皆と楽しい時間を過ごしたい」という松岡先生の意志でした。
本講演のテーマを「思いがけない事」と仰っていましたが、講演会が故に、ためになる話というだけではなく、
楽しくて笑ってしまう講演会になるとは思っておらず、まさに、「思いがけない楽しい事」だと嬉しくなりました。パディントン展の講演会の松岡亨子先生

大行列のサイン会!

そんな楽しい講演会が終わった後、当初のプログラムにはなかったのですが、またもサプライズで、サイン会が行われました。
来場した方の多くがサインを求めながら、松岡先生と会話していくという、大変アットホームな雰囲気が最後まで続き、一体感が最高だったイベントでした。

そしてイベント終了後、今回のパディントン生誕60周年を記念して、インタビュー取材を行いました!

松岡享子先生へインタビュー

今回、緊急でインタビュー企画が立ち上がった事もあり、ロザリー編集部からショートインタビューとして、
3つの質問をさせていただく形になりました!
パディントン展の松岡亨子先生

最初の質問

・パディントン全10巻の翻訳の中で一番難しかった所はどこでしょうか。

松岡先生:それはあまり記憶にありません。

――それは全編を通して、難しいと感じた事の方が少なかったという印象だったのでしょうか。

松岡先生:楽しかったからですね。

――今回の講演会の朗読でも改めて感じましたが、やはりパディントンの翻訳が楽しかったから難しいと感じる事もなかったのですね。

松岡先生:ただ、語呂合わせが上手くいかないときは、ちょっと大変でしたね。
でも、それを考えるのも楽しかったから、難しいとは思いませんでした。

――語呂合わせと言えば、先程の講演会で朗読された「パディントン、法廷に立つ」でもありましたね。
『法廷の「宣誓」をパディントンが分からずに「先生」と勘違いする』といった訳は、
本来の英文をそのまま訳しても、英語が分からないとジョークが分からず、
どうしても難しくなってしまうという表現ですが

日本向けに上手に手直しされていると思いました。

松岡先生:ああいう事がたくさん出てくるの!
でも、最初上手くいかないことがあっても、長い事考えていると何か解決方法は出てくるんですよね。

2番目の質問

・これから「くまのパディントン」を読んでいく子供たちに向けて、一言メッセージをお願いいたします。

松岡先生:「笑いたい時、気分を晴れやかにしたい時は、パディントン読んでごらんなさい?」って言いたいですね。

――松岡先生の人柄を感じる温かい言葉だと思いました。

最後の質問

・パディントン60周年を迎え、このパディントン展が開催された今、
著者マイケル・ボンド氏に捧げるメッセージをお願いいたします。

松岡先生:マイケルボンド氏、ご本人が仰っているように、自分の代表作になるとは思ってらっしゃらなかったと思うんですよね。
身近な世界を楽しく書いて、皆を楽しませようという純粋なお気持ちでお書きになって…
ですが、そんな作品だからこそ、他の作品とは違って残り続けて、ここまで愛されてきたのだと思います。

ですから、そういう作品を作って下さって、「ありがとうございます」という事を申し上げたいと思いますね。


講演会、サイン会と長丁場が続いたあとのインタビューの最中でも、終始、温かい笑顔で受け答えくださいました。
最初の質問の回答では、パディントンを楽しみ、日本へ紹介したいと思った松岡先生だからこその回答と感じました。
次の質問では、子供たちに語り掛ける松岡先生の姿が目に浮かぶように、柔らかな調子でお答えくださいました。
最後に、マイケル・ボンド氏への感謝の気持ちを語る松岡先生からは、パディントンの文章に感じていた温かさが溢れていました。

講演会は終わってしまいましたが、パディントン展では音声ガイドで、松岡先生の朗読を聴く事ができます。

パディントン展の音声ガイド
これから展覧会に訪れる方や音声ガイドを聴き逃してしまった方も、6月25日(月)まで「くまのパディントン™展」は開催していますので、是非ともご来場いただいて、聴いていただきたいです!

© Paddington and Company Ltd 2018


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