Rosalie

日本のおばさんが、クリント・イーストウッド似のイギリス人と結婚できた理由 43話 超特急で整えたトーキョーライフ前篇

※この物語は、ある日本のおばさんが主人公で、その視点から回想されていく実話国際結婚物語です。

マルコムとの新生活のために借りたマンションは、東京の真ん中にあった。
高台、南向きの、大きなリビングに太陽の光が燦々(さんさん)と射し込む瀟洒(しょうしゃ)な部屋だった。



英国紳士と結婚したある日本のおばさんが、この物語を綴り出した全ての始まりは→こちら
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この物語の登場人物

日本のおばさんEmma Rosemary Watson
クリント・イーストウッド似の英国紳士マルコム

この国際結婚物語のあらすじが分かる、関連書籍のご紹介

保守的なイギリス人老年紳士「マルコム」が、日本人妻と再婚し、日本へ。

ただし、彼はALSという不治の病で、
余命わずかと診断されていた。
そのような状況でも、
彼は淡々と日本の文化を味わい、
イギリスと比較しながら、
アイロニックに日記に記していく。

日本にまったく興味のなかった
コンサバ英国紳士が、
日本文化を楽しむようになった訳とは?

「TOKYO DIARY
~ある英国人が愛した素顔のニッポン」

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イギリス人ならではのガーデニングへの拘り

私たちのマンションの横には、大きな植物園があった。

動植物などの自然が大好きなマルコムには、コンクリートだらけの都市生活は気の毒だったが、
東京にしてはかなり広大な植物園はマルコムの恰好の散歩場所になった。

そこは江戸時代には、徳川綱吉が将軍になる前に住んでいた屋敷だったとかで、日本庭園や梅園も素晴らしかった。

とはいえ、手放しで気に入っていたというわけでもなかった。
マルコムにとってガーデンというものは、隅々まで庭師によって手入れがされているべきであり、
その植物園のレベルはかなり低いというのだ。

でもそこは大学の研究施設だったので、あまり手を入れてしまっては植物研究施設にならない。
目的が違うのだが、そこをどんなに説明しても彼には理解できなかった。

「トヨタとかニッサンみたいな金持ち企業が、資金をドンと出して、もっと見栄えのいい庭園にするべきだね」
とマルコムはいつもそういった。

イングリッシュ・ガーデンは色彩で魅せる

 

著作権者:Karen Roe,https://goo.gl/MJGXhP

イングリッシュ・ガーデンとは、写真のように、
庭の隅々まで人間の手が入った庭園で、主に花の色でデザインする。

イギリス式庭園は、あまり大きな目立つ花をたくさん植えることはなく、
例えばラベンダーのような細かい花をたくさんつける植物をエリアごとにびっしり植えていく
色彩のセンスは大事なのだ。

大輪の花はあくまでもアクセントとしてポイントポイントに植える。
マルコムは自分の庭に3本の牡丹を植えていて、中でも「スカーレット・オハラ」と呼ばれる一つがお気に入りだった。

日本庭園は形で魅せる

一方、日本庭園は、マルコムの言葉を借りれば
「色ではなくランドスケープ、形で見せるんだね」ということになる。

著作権者:663h,ライセンス:CC BY-SA 3.0,https://goo.gl/XzhCfQ

確かに日本庭園には限られた色彩しかない。

木々の、石類の灰色、池の水に映る空色などだ。
そこに、ポイント的に紅葉や梅、池に遊ぶ緋鯉などの色が映える。

我が家の隣の植物園にも、日本庭園があって、そこはマルコムのお気に入りだった。
マルコムが面白がったことに、植木の剪定がある。
日本の植木は丸く借り込む程度で、細かな細工はしない。
しかしイギリスの剪定は渦巻き丸・三角・四角、中には動物をかたどる剪定もある。

これも文化の違いなのだろう。

イギリス人の園芸文化は日常生活に根差している


イギリス人は園芸大好き人間である。
仕事の後で、週末に、一家総出で庭に出て、園芸を楽しむ。

どんな町にも「ナーサリー」と呼ばれるホームセンターがあり、
膨大な数の植物の苗木を売っている。
休日ともなれば朝からそこにやってきて、花や木の苗をじっくり見た後で、
併設のカフェテリアで多くの時間を過ごす人たちも多い。

園芸好きのイギリス人は親しい近所の人たちと、好きな苗木の交換なども頻繁にしている。
丹精した庭を見せたくて、日を決めてパブリックに公開している家もあるほどだ。
(入場料を取ってそれをチャリティに寄付するのが通例)

また夏になると、ロンドンや近郊では大規模なフラワーショウが開かれ、
全国から趣向を凝らして、形や色をハイブリッドされたたくさんの花が持ち込まれ、飾られる。


そこでは品評会はもちろん、即売会も行われる。
いい賞を受賞すると、園芸者の名誉になるし、苗などの販路も広がるのだのだろう。
植物はナマ物なので、ショウも後半になると植物がくたびれてくる。

だから初日はマスコミや特別ゲストの入場日だが、
2日目以降、なるべく早く出かけた方が花が綺麗と言われる所以だ。
しかし、最終日は植物の大バーゲンとなるため、それを目当てにたくさんの人がやってくる。
両手に抱えきれないほどの植物を運んで帰る人の波は最終日の風物詩だ。

ロンドンで一番有名な「チェルシー・フラワーショウ」では、
タタミ6畳くらいの面積に、園芸デザイナーがミニガーデンをデザインし、賞を競う催しもある。
このショウには毎年クイーンも訪れている。

そんな園芸大国から来たマルコムが、比較的地味な日本庭園文化を理解するにはそれなりの時間が必要だったのだ。

後編へ、つづく


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