日本のおばさんが、クリント・イーストウッド似のイギリス人と結婚できた理由 14 プラムの梅干し作り

〜日本料理は自家製で〜

言うまでもありませんが、マルコムという人は血統書付のイギリス人だったので、アジアに関する知識はインドで終わっていました。
地球はマレーシア(かれはマラヤと呼んでいた)から大滝になって海水がざあざあ流れ落ちており、その遥か上空に火星と日本が並んで浮かんでいる、というイメージなのでした。

当然ながら和食などというものを食したことはないし、正直、関心もないようでした。

第1話はこちら

おいしい梅干しがない!

ロンドンでは「ジャパンセンター」というスーパーマーケットを始め、トルコや中国などのエスニック系スーパーで米や大根を調達することはできました。
比較的リーズナブルな値段で日本食材が手には入るのですが、そのクオリティたるや、お世辞にもいいとは言えません。
とくに悲しかったのは、梅干しでした。

日本のスーパーでさえ1パック280円くらいで売っていそうなひしゃげた梅干しは塩辛いだけの塊で、マルコムは嫌悪していました。
私は「おいしい」梅干しが食べたかったので、日本に帰ると高級梅干しを買い込んでくるのですが、次第に「自分で梅干しを漬けてみたい」欲望が頭をもたげてきました
しかし、イギリスに梅はありませんでした。北限を越してしまっているのです。

そこで代替品としてアプリコットを探しましたが、これもフランスなどからの輸入ものしかありません。
イギリスで手に入るのはプラムです。
PYO(ピック・ユア・オウン)と呼ばれる観光果樹園があちこちにあって、たくさんのプラムが取り放題でした。
日本と違い、入場料は無料、しかも果樹園内で食べる分も無料

お持ち帰りのプラムだけを量り売りしているという気前のよさで、インド人ファミリーなどが休みの日には大勢の子どもを連れてピクニックしている光景がよく見られました。
私はそこでまだ熟す前の青プラムを選んで2キロばかり買い、梅干しならぬプラム干しにチャレンジすることにしました

自ら梅干作りにチャレンジ


梅干しの作り方はネットにいくらでも書いてありました。

私は注意深くプラムを洗い、ヘタを取り、焼酎の代わりにラムで消毒し、ガラスのボウルに塩を敷いてプラムを漬け込みました。
レンガで重石をして冷暗所に置いておくと、本当に数日で水が上がってきました。

数週間後、いよいよ天日干しです。

これが思いの外大変でした。
イギリスでは一日何回も天候が変わるからです

天日干しへ

「よく晴れた日を選んで梅干しを並べて干し、何度か裏返す。これを繰り返す」とあっても、1日中晴れている日のほうが珍しい。

ある晴れた日に、満を持して私は天日干しを実行しました。
大きなネットのようなものにプラムを並べて日に当てました。
イギリスの太陽は日本と同じとは思えないほど熱量が弱いですが、夏だけあって爽やかに晴れ上がっていました。
が、1時間と経たないうちに、シャワーといって通り雨がパラパラと降り始めます
私は慌てて梅干しを取り込みました。

マルコム、梅干作りに協力する

何をしているのか、怪訝そうなマルコムでしたが、ここは彼の力を借りなければ仕事に行けません
天日干しをしながら1日数回プラムをひっくり返し、雨が来れば取り込む、というタスクを丁寧に説明して、私は外出しました。

その日から、マルコムは実直なまでに毎日、器用にも箸でプラムをひっくり返しては日に当ててくれました(今でもおびただしいプラムをひとつひとつ箸でひっくり返す彼の後ろ姿がまぶたに浮かびます)。

3日後、プラムは色を変え、あのお馴染みの茶色になりました。

これにはマルコムが驚いたようでした
太陽の光には特別な力があることを彼が実感した瞬間でした。

気になる梅干のお味は…?

食してみると、味はまさに梅干しそのものでした!
正直、種までたどり着かないとそれが梅でなかったということがわからないほど、味は梅干しと酷似していました。
梅干しは、必ずしも梅でなくても作れることを私も学びました。
もちろん、プラムでもできるはずです

往年、日本に帰国した時に再度梅干し作りにチャレンジしましたが、高温多湿な日本では、イギリスに比べてはるかにカビの発生率が高く、断念したことを告白しておきます。

つづく

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Emma Rosemary Watson

Emma Rosemary Watson

2005年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ、
Transnational Communication and Global Media修士課程終了。
以降、ロンドンにて日英コンテンツの発信を行う。
ロンドン在住中にイギリス人の夫と結婚、
イギリス流のライフスタイルのなかで暮らす。
現在、イギリス人の好むイギリスのカントリーサイドを歩くネイチャーウォークの楽しさを日本人にも知ってもらおうと活動中。

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