元旦に、腹部周辺半端ない激痛に教われた。
痛くて声も出ない。
夫に訴えると、近くのプリンセス・ロイヤル病院のA&Eに連れて行ってくれた。
アメリカでいうところのERである。
元旦で、クリニックはやっていないので、急患は皆そこに集まってくる。
車いすに乗った人も、中には心臓の周囲にアダプター端子をつけて、モニタリングしたままの重病人もいる。
頭から血を流している女の子もいる。
壮絶な風景に、自分の痛みなどまだ軽いほうかとも思うが、いやいや激痛は収まるばかりか激しさを増してくる。
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地獄の待ち時間
A&Eに入ったのが午後2時半頃。
日が暮れても途中看護師さんが血液を採りに来た程度で何の親展もない。
30分にひとりくらい診察室に入っていく程度で、患者は増える一方だ。
午後8時頃になってアナウンスがあった。
「現在受診は12時間待ちです。ご自宅で静養できる方はお帰りください」
12時間待ち!!
「ゆりかごから墓場まで」と謳われたイギリスの「無料医療制度」の実態である。
タダより高いものはない。
イギリスの医療システム
通常だとGPといって受け持ち医が決められ、歯が痛かろうが脚が折れようが、かならずGPへの面会が必要になる。
そのGPから専門医に紹介される、というのがNHS(ナショナルヘルスサービス)のシステムだ(これは、イギリス人でなくても、半年以上イギリスに滞在している外国人も利用できる)。
ただし救急救命室A&Eは年中無休だ。
年々減少しているA&E
医療費がタダ、という夢のような国だから、移民も多く集まるのだろう。
しかし、GPに合うまでに1週間〜2週間、さらに専門医にアポが取れるまでひと月近く、と「ガンだったら医者に会う前に進行して手遅れになっちゃう」という気持ちになってくる。
A&Eは国家財政の窮状から全国的にどんどん数が減っている。
うちの近所も最近ひとつ閉鎖になったので、プリンセス・ロイヤルが急患であふれ帰ったのである。
あまりの痛みに、私は病院で初めてベンチに横になり、仮眠をとった。
結局医師に会えたのは日にちが変わってからだった。
真夜中に、それでも若い二人の医師が私のからだを丹念に調べてくれた。
レントゲンもとってくれたけれど、結局「異常なし、経過観察」と診断された。
お薬も条件付きでタダ
イギリスの病院は無料なので、日本と違って支払いはない。
投薬があれば、処方箋をただでくれるので、街の調剤薬局に持っていくと薬がもらえる。
残念ながら薬のほうは60歳以下は有料である。
手遅れだった発見
幸い、その後しばらく痛みが治まっていたので、放置しておいたのだが、3週間ほどしてまた痛みが出て来た。
その日はA&Eではなく、近所のGPを訪ねた。
GPはベテランの内科の先生。
50歳くらいのビール腹の紳士である。
彼は私のからだに聴診器を当てようとして背中を見てひと言こういった。
「帯状疱疹だね」
そう、私の赤いぶつぶつはおなかや背中に出るタイプで、顔には出なかったため、発見が遅れたのであった。
帯状疱疹の薬が効くのは、罹患して72時間以内、とのことで、私のは「手遅れ」だった。
「そのうち収まるから、あまり無理せず普通に生活していていいよ」
そんな先生のアドバイスに送られて、私はクリニックをあとにしたのであった。
イギリスに行くときは保険をつけて!
ちなみに、イギリスにも私立病院はある。
しかしとても料金が高いため、一般的にはお金持ちしか利用していない。
ところが、観光旅行でイギリスに行くときには、保険をつけておけば、私立病院に実質タダでいけるので、イギリスに行くときは必ずつけていくこと!
なお、留学でイギリスに行く場合は、大学にクリニックがあるところもある。
そこは語学留学では利用できないので、その場合は留学保険に入っておくとよい。
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