その日はなるべく全員とたくさん話をしようと私はがんばった。
当時の英語は拙くて、なかなか思うようにおしゃべりができなかったが、友達作りキャンペーン実施中だった私は必死だった。
私はニックとキリマンジャロの話で盛り上がった。
健脚ニックがキリマンジャロ経験者だったからだ。
【第1話はこちら】
またマルコムとは天ぷらの話をした。
のちのちまでマルコムがジョークとして使っていた私との「出会いのエピソード」は、「Emmaに近づいたのは天ぷらの作り方を教わりたかったから」というもの。
来る客くる客にその『爆笑ギャグ』を披露されるのにはちょっとうんざりしたけれど。
1年に1回のタイミング
マルコムは、この会のウォークに参加するのは1年に1回程度だと言った。
なにせ、すごく大きな庭があるので、手入れするので手一杯なのだという。
そのとき私は「なんてホラ吹きな人だろう」と思った。
のちに付き合うようになって、その話は真実だ、ということがわかった。
テニスコートも悠々とれる大きさの芝生の庭を、マルコムは確かに持っていた。
だから、マルコムがBox Hill に参加していたのは、本当に縁だとしか言いようがないことだったのだ。
地球の反対側からやって来て、イギリスのウォーキングサークルに参加した私、そして1年に1回という頻度でウォークにやって来ていたマルコム。
偶然の偶然が私たちを出会わせたのだった。
その日、4人は無事駅でゴール、私はみんなと住所とメールアドレスを交換して電車に乗った。
最後の連絡
10月は私の誕生月。
でも異国にひとりでいるのだから、何も期待していなかった。
しかし、誕生日の少し前にカードが届いた。
なんと、マルコムからだった。
そのクセのある直筆を読むのは簡単ではなかったが、私は時間をかけて暗号をとくようにそれを読んだ。
「誕生日おめでとう。僕はあなたに、2回メールを出しました。でも返事はなかった。もしいやでなかったら一緒にウォークに行きませんか?これが最後の連絡です。これで返事がなかったら、あきらめます」
私は驚いた。
メールはスパムに入ってしまったのか、あるいは綴りが間違っていたのか、全然届いていなかった。
私はマルコムに電話をかけた。
「カードをありがとう。もちろん一緒に歩きにいきたいです!」
それが私とマルコムの、長い縁の始まりだったのである。
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