〜イギリス人は甘党ぞろい?〜
褒めるところがなければ包み紙を褒めろ!
息子たちとの初めての対面はおおむねうまくいったようだ。
あとからマルコムに、息子たちが私のことを「虫も殺さないような人だね」といった、と聞いた。
【第1話はこちら】
これには説明が必要だろう。
日本語で「虫も殺さない」と言えば、そのあとには否定的な言葉がつく。
つまり「虫も殺さないような顔をして、恐ろしいことをやる女だ」という流れだ。
だが、英語の表現の場合は後半はない。
虫も殺さない女性は、たおやかで優しい女性なのだ。
つまり私は誉めてもらえたというわけだ。
お世辞かどうかは別として、合格点をもらったことにしよう。
やれやれ。
実際、イギリス人はお世辞がうまい。
とにかく相手を誉める。
着ているもの、持っているもの、もらったプレゼント、出された料理、なんでもかんでも誉める。
手当たり次第、誉める。
誉めるものがなかったら、包み紙でも誉める。
誉められて悪い気はしないので、日本に戻ったときでも私は相手を誉めるようにしている。
誉めることは相手を観察することにもつながるので、一石二鳥なのだ。
1本の歯で甘さを楽しむ!?
さて、息子たちがどれだけ父の誕生日に支払ったかはわからないが、レストランで出た料理はイギリスのフュージョンなディッシュだった。
デザートも暖かいものだった。
イギリスのデザートは暖かく供されるものが多いのが特徴だ。
とても甘くてほかほかのデザートをふーふーいって食べる。
イギリス人は概して「sweet tooth」である。
sweet toothは、直訳すると「甘い歯」だが、意味は「甘党」のこと。
面白いのが、toothが単数であること。
甘さを楽しむには1本の歯では足りないではないか。
マルコムに「なぜsweet teethではないの?」と聞くと、まじめな彼は考え込んでしまったものだ。
あまり突っ込むと、「君のいうことはもっともだ。これは本来、sweet teethというのが正しい」と私に勝敗をあげて、話を終わらせていた。
ジョージ6世統治時代からきた難敵
息子たちとの対面は無事終わったが、マルコムの継母ペギーの場合は少々やっかいだった(らしい)。
なにせ当時86歳で、エリザベス女王の父、ジョージ6世の統治時代から生きている、戦前派の老婦人だ。
信仰が厚く、毎週教会の礼拝は欠かさない。
私のような東洋人をストレートに紹介すべきかどうか、マルコムは大いに迷ったらしい。
その結果、ペギーの誕生日のお茶会で、どさくさにまぎれて私を紹介しようと決めたのだった。
私はその日、いわれた時間に、エセックス州のブレント・ウッド駅に降り立った。
ことの次第をあまりよく理解しないままに。
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