~ウナギとの死闘イン台所~
日本料理で特に懐かしかったのは、ウナギの蒲焼でした。
イギリスにもウナギはあるのですが、ぶつ切りにして酢で煮て、煮こごりごとマスタードで食べるという、あまり上品でない食べ物が有名です。
そのほかシチューなどにも使われるようですが、イギリスのウナギ料理は食べるたびに後悔します。
その代わり、夢に見るのは「ウナギの蒲焼」。
生きているウナギが手に入るのだから、イギリスでだって蒲焼ができないはずがありません。
【第1話はこちら】
ウナギをゲット!
懸念だったのは、ウナギをさばくときに、まな板に頭を打ち付ける千枚通しの代用を何にするかです。
錐を用意して、とりあえず生きたウナギをゲットすることに。
これはわけはありませんでした。
いつもハイストリートで屋台の魚屋を火曜と土曜にオープンしているロバートが、生きたウナギを仕入れてきてくれることになったのです。
なんと1匹20ポンド!
日本円で4000円とは物価高のイギリスとはいえ、高価でした。
昔はテムズ川でもたくさんとれるようですが、水質の劣化などでどんどん減り、とれなくなっているとのことでした。
江戸前と上方式
数日後、我が家にやってきたウナギくんはいたって元気でした。
私は例によってネットで蒲焼きの作り方を何度も読んで、スタンバっていました。
このとき、蒲焼きには江戸前と上方式があることも始めて知りました。
日本で蒲焼きを作ることなどまずなかったので、勉強になりました。
ベジタリアンになりたい
ウナギをさばくのはマルコムの仕事、料理が私の仕事と分担しました。
マルコムはまな板にウナギの頭を打ち付けようとしましたが、ぬるぬるするし暴れるしで、とてもじゃありませんががウナギ職人のようにはいきません。
手を焼きまくった挙げ句、ウナギの頭を包丁で切り落としておとなしくさせる計画に変更しました。
「くそっ、人生で初めてベジタリアンになりたくなったぜ!」
ウナギをさばく
そういいながら、マルコムは流し台の中で血だらけになったウナギをやっとのことで三枚におろしました。
おろすときに背中の皮を繋げたままにしておくのが江戸前らしい。
きれいにおろされたウナギを今度は私が竹串で刺していくのですが、これが滅法堅い。
ウナギがこんなに堅い魚だったとは!
大振りなイギリスのウナギからは2.5人分の蒲焼きが取れました。
自作の蒲焼きの味は…
グリルで白焼きにしてから蒸気で蒸して(ここで余分な脂分を抜く。ウナギは脂っこいのです)、最後にたれを塗って焼けば蒲焼きの出来上がり。
それだけですが、さばくところから計ればゆうに3時間はかかっています。
炊きたての白いご飯に蒲焼きを乗せて、たれの残りをかけました。
ふたりで「ロンドン初蒲焼き」を堪能し、マルコムは「うん、美味しいよ」と目を細めました。
その日以来、ウナギの蒲焼きはマルコムのお気に入りの和食にランクインしたのでした。
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